305「結婚の約束」 令和3年11月

十一月二十九日、仕事を終え家に帰ると彼から「うさぎちゃん」とラインが届きました。私が前日鼻を真っ赤にして泣き続けたからです。前日に彼から「三年は結婚できないからね」と言われ、児童扶養手当のことで深刻に悩んでいたことと、もうすぐ彼と結婚できるんじゃないかと期待をしていたことが崩れさったからです。結婚を三年も待つなんて私には無理です。気が遠くなるほど長すぎます。三年も待てばその時には私はもう四十二歳になりもう子供だって産めないだろうと思います。彼が自分の考えを押し通すならもう彼とは別れるしかないのかと考えていました。

彼からのラインで彼が私と別れたくないと思ってくれていることは分かりました。彼から「裕美が別れる別れるうるさいから僕は死ぬことにしました」とラインがきたのでまた病んでるのかと心配になり思い彼に電話をかけました。彼は普段は俺様気質なんですが、メンヘラな部分も持ち合わせており、気分が落ちると相手を心配させるような言葉を連発します。電話をかけると彼は「今首吊ってるところです」と元気のない声で言いました。実際は首を吊るなんて私の気を引くための嘘なんだと思いますが、だいぶ気分が落ちていたんだろうと思います。

電話で私は三年も待てないということをはっきりと伝えたところ、それなら一年後に結婚しようと言われました。息子が今小学五年生なんですが、息子が中学校に上がるタイミングで彼と結婚し彼の家に引っ越すという話になりました。三年先は私にとってはあまりにも長い時間なので無理だ、耐えられないと思っていましたが一年なら待てます。

そして、結婚したくても今すぐすぐには私も彼の家に引っ越すことはできません。それは我が家にメシヤ様の御神体と御尊影、大黒様、先祖を祀っているからです。彼と結婚するとなるとまずは彼に私の信仰を理解してもらわなければなりません。私は彼の家に泊まりに行く場合でも夜夕拝をしてから行きます。朝彼の家から帰ってきて普段通り朝拝を行います。朝拝、夕拝はたんにメシヤ様に御挨拶、御祈りをするためだけではなく、自分を清めていただくもの、身霊の霊層界を上げていただくものでもあるので絶対に疎かにはできません。私は常に邪神に隙を狙われていると思うので、朝拝、夕拝を疎かにしてしまえば私は簡単に邪神にやられてしまうかもしれません。

彼と結婚したとしても御神体をどうすればいいのか、我が家の先祖をどうすればいいのかという問題もあります。私は最初に彼と付き合いだした一年半前から彼との結婚を考えていたので、結婚した場合の御神体の祭り方についても早くからどうするべきか考えていました。彼は独身でありながらすでに家を建てており、もちろん床の間はありません。床の間がないので我が家で御奉斎している御神体を彼の家に御奉斎することはできません。実物は見たことがないんですが、メシヤ教のメシヤ講座の中で床の間がない家庭用に御額に入っている御神体があるというのを以前読んだことがあります。彼と結婚して彼の家に住むことになった場合には御額の御神体をいただきたいなと考えていました。そして、その御神体をどの部屋に置くべきかということなども勝手に一人で考えていました。私が神様を信仰していることには彼は特に偏見などは持っていないだろうと思いますが、私が彼の家に御額の御神体を奉斎したいなどと言い出せば彼は驚き反対されるだろうと思います。現時点で私はどの教団にも所属していませんし、メシヤ様信仰が一つにまとまる日がいつになるのかも分からないので、彼との結婚が一年後というのは私にとって都合がいいです。

問題なのは彼が本当に人食い殺人犯なのかどうかということです。本当であるなら私は彼のことを警察に言うしかありません。ですが、私にはやっぱり本当とは思えないという気持ちがあります。彼が人を殺し人の肉を食べたというのは彼がうつ病になって仕事を休職していた時の話だと思います。ですが、その頃彼には幻覚症状が起こっていたそうです。人を殺し人の肉を食べたというのは彼の幻覚であった可能性があります。そして、それを今でも彼の頭の中では本当にやったことだと思い込んでいるんじゃないかと思えます。彼にはそうとう力の強い邪神が憑いて幻覚による記憶を本物の記憶だとずっと思わせられているんじゃないかと思えます。サイコパスである彼の正体はいまだに分からないことが多いです。

その日も彼は「俺は神だ。神全体の中の神だ」と言いました。私が「何の神なの?」と聞くと、彼は「裁いてた」と言いました。オオクニヌシである彼が霊界にいた時の記憶なんだと思います。「俺は神だ」などと言うセリフは普通は犯罪を犯すような精神病者が言うセリフだと思います。ですが、彼が霊界で人を裁いていたのは本当の話だと思いますし、彼は私を支えてくれるために生まれてきているんだとも思うので、たとえ彼が本当に頭がおかしくなって人を殺そうという考えが起こったとしてもそこは全力で彼の正守護神や先祖が止めてくれるはずだろう、などとも考えたりします。

前日の別れの危機から一転して一年後に彼と結婚することになり、彼と結婚できることにようやく不安だった気持ちが落ち着きました。結婚へ向けての準備もしていく一方で私は彼が本当に人食い殺人犯であった場合の心の準備もしなければなりません。もしそれが本当のことであったなら私は彼のことを警察に言うしかありませんし、彼が服役しても彼が帰ってくるまで待っていたいです。