4「父の特性」 平成28年10月

父は昔から手を洗うことに強い執着があります。普段も外から帰って来たらそのまま家の中には入らず、必ず二度は家の裏の水道で手を洗ってから家に入ってきます。一度裏庭で手を洗ったあと、いったん表の倉庫で着替えをしたりして、そのあとまた裏に手を洗いに行きます。外でお酒を飲んできて泥酔状態であってもどんな状態でも必ず外で手を洗ってからでないと家の中には入ってきません。なので、父は泥酔して帰ってきた時は庭の倉庫で座って居眠りしつつ二度裏庭で手を洗って家の中に入って来るまで一時間はかかります。その間に自分で作った庭のセメントでつまずいて転んだり、家の外壁にぶつかったりして怪我をしているのも何度も見てきましたが、父は何が何でも手を外で洗ってから家の中に入ってくるという強いこだわりがあります。

そして、父は手は必要以上に洗うのにお風呂に入ることを面倒がり、家のお風呂には入らず一週間に一度か二度温泉に行きます。温泉の広い空間でお湯を思う存分使いながら洗いたいんだろうと思います。そして、父は台所の洗剤を汚いものだと思っているようで、洗剤を使って食器を洗うことは一切ありません。水洗いのみです。洗ってカゴに入れて乾かすのではなく、水洗いしたあとコップや皿に水をいっぱい貯めてシンクの上に置いておき、それを使う時にまた水洗いをしてから使うというやり方です。父は一人暮らしをしていた時には割り箸と紙皿を水洗いして使い回していました。そして、洗剤は一切使わないのに、洗剤の容器をごしごし洗います。私や妹が洗剤を使うので、その泡が容器に付いていたことがあり、それ以来父は毎日洗剤の容器を洗うようになりました。洗わないと気がすまないんだろうと思います。精神状態が悪くなっている時に特にそういうことに恐ろしいほど神経質になっていました。そして、父は電気に対してものすごく執着します。朝まだそんなに明るくない時間に電気をつけると「朝なのになんで電気をつけるんだ」とすぐ文句を言われ消されたりします。夕暮れに私が電気をつけて料理をしている時も消されたことが何度もあります。最近は見かけませんが、父は夜目がきくようで、以前精神状態が酷かった時は夜トイレに入る時も電気をつけずに入っていました。

他にもいろいろこだわりはありますが、この様子だけでいうと猫霊の特性が強いように思います。お風呂には入らないのに手だけは必要以上に洗うのは不思議なんですが、ネットで猫霊が憑いている人はお風呂に入りたがらないとあったので頷けました。父の変わった畑の作り方に関しても、人様の家の前まで広々と場所を使い、野菜を踏んで汚さないように、自分もなるべく汚れないようにするために小さな畑をぽつんぽつんと作っている様は潔癖で広い行動範囲で自由に過ごす猫の特性が表れているように思えます。妹から聞いた話ですが、面白いことに、父は精神状態が酷かった時、夜中に大きな声でニャーと叫んだそうです。

父のこの独特な異常なほどの潔癖、こだわりの強さはアスペルガーだからだといえると思いますが、特に手や足を必要以上に洗う行動は病名をつければ強迫性障害にもなるんだろうと思います。症状によって病名は違いますが、原因は猫霊によるものだと思います。猫は自分の手足を舐めて清潔にしますが、父はその特性が表れているんだと思います。父には若い時から猫霊が憑いていたんだろうと思います。父は狐やら猫やら動物霊の強い影響を受けていますが、父の副守護神は天狗だろうと思います。天狗は頭がいいそうですが、アスペルガーの父は驚くほどいろんな知識が豊富にあります。多少間違っている部分もありますが、歴史に関することなどもまるで自分が見てきて知っているかのように細かいことまで喋ります。ですが、知識はものすごくあるのに残念なことに説明が下手です。それに、早口で偉そうな喋り方になるので聞かされる周りの人も驚きます。もっとお腹にいる副守護神の霊力が弱まればコミュニケーション能力が伸び、人間らしさが増し、せっかくの天狗の頭のいい能力ももっと活かせるようになるんじゃないのかなと思えます。