264「ナイフ」 令和3年3月

翌日彼は私の家に来ることになっていました。彼が人を殺し人の肉を食べたことがある殺人犯だと分かった以上彼と関わるわけにはいかないと思いましたが、もう一切連絡を取らないと言ったところで、きっと彼は口封じに私を殺そうとするんだろうなと思いました。それに、私は彼を救いたいという思いがありました。彼の身霊を清めてあげて彼が自分の罪を認め反省し、警察に自首できるようにしてあげることが彼のためになることなんじゃないかと思いました。

仕事の休憩中彼に動物霊の影響を受けてるよ、うちに来たら祓い清めてあげるよとラインを送りました。夕方彼から返事がきました。彼は動物霊の存在を知らないようでしたが、人に悪いことをさせたり、悪い思考を起こさせたりするんだと簡単に説明しました。

彼と一切連絡を取らないようにしたところで口封じに彼が私を殺しに来ることは予想できることですし、連絡を取らずにいることの方がかえって不安になるとも思い、その夜改めて普段どおりのやり方で彼を家に呼びました。一緒にお酒を飲んでテレビを見ながら彼に肩を揉んでもらっていた時ふと後ろを振り向くとちょうどその時彼が右のポケットからナイフを取り出していました。正直びっくりしましたが、やっぱりそういうことを考えていたのかと思いました。逃げるようなことはせず、どうしてこんな物を持ってきたのかと聞きました。彼はそのナイフは彼が十代の頃から使ってるナイフだと言いました。血が着くと切れにくくなるとも言いました。そして、「今日は裕美さんが天に召される日だから」と彼は普段と変わらない声で言いました。私は彼からナイフを奪い、「なんでこんなことをするの?病んでるの?こんなことをしたらだめ」と彼の両頬を軽くつまんで説教するように言いました。ナイフを奪ったといっても力づくで取ったわけではありません。彼も止めなかったですし、優しく彼の手から離しただけです。彼は体を鍛えている人で、力が強いことが彼の自慢でもあったので、当然私が彼に力で適うわけがないので無理やり力を入れて奪おうとすれば彼を刺激し殺られると思ったので力など入れず優しく彼の手から取りました。

彼は私に「お父さんに何をされたの?」と興奮しながら言ってきました。実はこの一年間彼には私がお酒を飲んでおかしくなっていた精神病の父に押し倒されて無理やり胸を見られた話はしていなかったんですが、ほんの数日前彼に「○○くんに言えないようなこともお父さんにされた」と話していたんです。興奮しながら言った彼の言葉を聞いて前日の彼との電話で彼が言った言葉が瞬時に思い浮かびました。彼は人を殺した理由について「かわいそうだったから」と言ったんです。もし私が父にされたことを話せば彼は興奮しながら私のことを「かわいそう」と言って私を殺すんじゃないかと瞬時に思いました。なので、私は「今はそんなことはどうでもいい」と言い、怯まず彼を抱きしめながら彼に優しく説教するような口調で「こんなことをしたらだめだよ」と言いました。彼は「今日殺すのはやめておくね」と言いました。彼の言葉は脅しのような言葉ばかりでしたが、私は一切動揺した態度は取りませんでした。

そして、あまり書きたくない話ですが、彼を家に呼んだ以上彼を変に刺激するわけにはいかないので彼と性行為をしました。初め彼は二人でしゃべっていた居間のこたつとソファーの間に私を押し倒してきて、ここでやろうと言ってきました。普段と違う場所で興奮し、なおかつソファーの上に彼のナイフが置いてある状態なら彼は行為のあと興奮して間違いなく私をそのナイフで刺すんだろうなと恐怖を感じ、トイレに行きたいと言いいったん彼から離れました。彼もその間に歯磨きをしだし、それから布団に入り行為をしましたが、その時には彼の異常は何も感じられませんでした。ですが、行為のあとに彼にナイフで殺されるかもしれないと思ったので彼が眠ったあと彼のお腹に手を当てて彼の副守護神が妙なまねをしないようにメシヤ様に何度も祈りながら彼の横で寝た状態で彼に浄霊をしました。そしたら彼が一瞬目が覚めて「今おじさんに声をかけられた」と寝言のように言い、そのまままたすぐ眠りにつきました。おそらく彼には副守護神以外にも動物霊が憑いているはずなので、彼の眠りが深くなったタイミングで彼の額に浄霊をしました。しばらくすると彼がまた一瞬パッと目を開けたのでそれとなく手を彼の頭頂部に当てて彼の頭をしばらくなでました。何度もメシヤ様に祈りもう一度彼のお腹に手を当てて浄霊しながら私も眠りにつきました。熟睡はできなかったものの彼にナイフで刺されることもなく一夜が明けました。朝目が覚めた時彼は警察に追われる夢を見ていたと言っていました。

本当は彼が来たらすぐに彼を御神前に案内し、彼に天津祝詞を聞かせ、そのあと彼に浄霊ができたらと考えていたんですがそんなことはできませんでした。ですが、私を殺す目的で来ている彼に堂々とそんなことをしたら余計に彼の感情を刺激してしまっていたかもしれないので、寝ている彼にこっそり浄霊をするというやり方で正解だったのかもしれません。

彼が眠りについて浄霊をしだしてすぐに「今おじさんに声をかけられた」と言った時もしかして彼を操っているのはその男性の憑依霊なのかと思いました。ですがあとになって考えて、もしかするとそのおじさんとは彼の恐ろしい行動を止めようとした彼の先祖か守護霊だったのかもしれません。もしくはメシヤ様が御自ら出てきてくださって言霊で彼の暴挙を止めてくださったのかもしれません。

正直私は自分で自分のことを肝が座っているなぁと思いました。彼が私を口封じに殺しにくるかもと分かっていてナイフまで見せつけられても動じなかったのは発狂する精神病の父に何度も殺されかけた経験があるからです。それに私はメシヤ様を信仰していますし、正守護神の力も強いと思っているので本当に殺されることはないだろうとも考えていました。

その日は無事にやり過ごし彼も帰って行きましたが今後どうするかが問題です。彼は私が警察に通報することを恐れているので通報などせず普段どおり彼と連絡をとりながら彼への遠隔浄霊に取り組み、彼から悪霊が離れ彼が自首するのを待とうかと思います。ただ怖いのは我が家の玄関の鍵が壊れているので彼が夜中でもいつでも勝手に家の中に入ってこれるということです。そのことを考えるととても不安になります。玄関の鍵もですが玄関のガラス戸自体も壊れているので買い替えないといけないんですが、お金がないのでずっとそのままの状態でした。玄関の鍵とガラス戸が壊れたのは精神病の父が玄関先で暴れた時の話で壊れてからもう四年ぐらい経ちます。鍵がかからなくても普段は全く気にしていなかったんですが、彼が私を殺しに来るかもしれない今は鍵がかからないことがとても怖いです。  

彼が変な気を起こして私を殺しにこないように、悪霊が離れ彼が改心できるように毎日彼に遠隔浄霊をしようと思います。