267「人食い、カニバリズム」 令和3年4月

四月九日になりました。彼との関係を終わらせてから四日経ちました。妹からは「生きてる?」と心配の電話が来ますが、彼からは一切連絡も来ていませんし、彼が口封じに私を殺しに来るということもありません。彼の通常の仕事休みは土日なので当分の間は金曜の夜と土曜の夜は身の安全には注意しなければとは思っていますが、彼から聞いた怖い話は誰にも言わないと伝えたので、一応は大丈夫なんじゃないかと思います。

そもそも彼は絶対に警察に捕まりたくないと思っているわけなので私を殺せば捕まるとは思っていたはずです。私の妹も彼の存在は知っていましたし、彼の職場の同僚の人の実家がうちの近所にあり、彼の車がうちの前に停まっているのをその同僚の人にも見られたことがあるみたいなので、もしも私が殺されて死んだり行方不明にでもなったりすれば彼が警察に調べられるはずです。なので、彼は口封じに私を脅していただけだとは思います。ですが、殺すつもりではなくても殺してしまうのが悪霊に操られている人間のやることです。

彼がいつ人を殺し人の肉を食べたのかは聞いてはいないんですが、もしかするとそれはうつ病になって休職していた時なんじゃないかと思います。彼は十九歳の頃付き合ってすぐの彼女に子供ができ一度結婚しています。彼がうつ病になった原因は職場での大きな怪我と家庭の問題とが両方重なったことからのようです。怪我がある程度回復して職場復帰してから彼の様子がおかしくなり職場の人から病院に行くように言われ病院へ行ったそうです。その後死のうと思い病院から処方された薬を一気に全部飲み倒れ病院へ運ばれたそうです。そして病院の隔離室へ入れられていた彼は食事の時の箸を割ってまた死のうと思い自分の腕を刺したそうです。

彼はその時香川に住んでいたんですが、病院を退院して半年ほど実家に戻り休養していたそうです。休養中に彼が薬を飲んでいたのかどうかは聞いていませんが、入院中には明らかに精神安定剤やら何やら入れられていたはずです。彼に幻覚症状が起こったのは薬のせいだと思います。薬を入れられたせいで動物霊に憑依され、またお腹の副守護神の力も強くなり幻覚が起こったりしたんだと思います。彼は半年ほど鹿児島の実家で休養し、また仕事に復帰したそうですが、足の怪我が原因でその仕事を続けることもできず、その仕事は辞めたそうです。そして、奥さんとも離婚したそうですが彼は二人の子供のことが心配だったので離婚後一年間は子供の近くに住み、朝から晩まで働き続け子供が食いっぱぐれないようにと養育費を毎月十万ほど渡していたそうです。その頃彼は不眠症で一日二、三時間しか寝ていなかったそうです。

もし彼が人を殺し人の肉を食べたのが本当の話であるなら、おそらくうつ病で薬を飲んで動物霊に憑依され幻覚症状が起こっていた頃に元々本能的に思っていた人の血が見たい、人の肉を食べたいという欲求を満たす行動をとったのかもしれません。彼は不眠症だったようなので脳が貧霊状態で余計に動物霊の操り人形になってしまったのかもしれません。そして、食べた肉は女性だと言っていたので、絶対に自分の身元がばれないようナンパか何かで知り合ったお互い素性を知らない相手を声を出さないように首を絞めて殺し、体をナイフで切っていったんじゃないかと想像します。私が彼との関係が始まった当初も彼は不眠症で薬を飲んでいたので、もしかしたらこの一年の間にも彼はそういうことをしていた可能性はあります。あくまでも想像の話です。

自分が愛した人が人を殺し人の肉を食べたことがある人間だったなんて信じられません。彼が恐ろしい人だったと分かった今でも彼のことを嫌いになんてなっていません。そもそも彼は子供がいる私とは付き合えない、結婚する気もないと言っていた人ですが、もし彼が私のことを想ってくれるなら私は彼が罪を償って帰ってくるまでずっと彼のことを待っていたいです。

彼の怖い話が本当だとすると彼はうつ病になったから人を殺し人の肉を食べたわけではありません。うつ病になった時に薬を飲んだからそういう怖ろしいことをしてしまったんだと思います。愛する人が殺人鬼になってしまわないように早く薬というものが無い世の中になってほしいです。薬毒の恐ろしさをお医者さんや看護師さん、世の中のすべての人に早く分かってほしいです。