246「いなばの白うさぎ」 令和2年9月

約半年間の泥沼の恋愛が終わったのは九月二十七日でした。彼のことを本気で好きになり、結婚という彼との将来まで考えたうえで彼と付き合うと決めたのに彼にはうつ病を抱えた別の女性の存在があり、本当に苦しい泥沼の恋愛になってしまいました。ですが、彼との出会いも運命だったと思います。私の別れた夫は天若彦の系統の人でした。離婚後私が好きになった人は三人いますが、三人ともスサノオ系統の人でした。そして、この半年間夢中になった彼はオオクニヌシの系統の人だったんだと思っています。

今から三年ほど前の話になりますが、私が自分の恋愛のことでいろいろ考えていた頃どうも「いなばの白うさぎ」が何度も頭に浮かび、どういうことだろうと謎に思っていました。ちょうどそのタイミングで息子が小学校の図書室からいなばの白うさぎの本を借りてきて驚いたこともあります。そして、妹の知人の方が私へのお土産として出雲大社のお守りをくれていたんです。出雲大社主祭神がいなばの白うさぎに登場するオオクニヌシです。

彼との泥沼の恋愛が始まってから本棚の整理をしていた時にちょうどその出雲大社のお守りが出てきて、彼はもしかしてオオクニヌシの系統なのかなと思ったんです。オオクニヌシは何人もの女性と結婚しており、女性からモテるタイプだと思いますが、彼も同じようなタイプです。本人は何も意識していないようですが女性を惹き付けるのがとてもうまいです。そういう面があるからこそ私も彼の言動、行動にとてもはらはらさせられました。

彼がオオクニヌシの系統であり、いなばの白うさぎと私が関係あるなら私はその登場人物であるヤガミヒメと同じ立場になるということを示唆しているんだと思いました。神話の中ではオオクニヌシヤガミヒメと最初に結婚していますが、その後嫉妬の激しいスセリヒメと結婚しています。ヤガミヒメはスセリヒメの嫉妬を恐れてオオクニヌシから去ったそうです。私自身はこの数ヶ月嫉妬とプライドと執着心でどろどろの感情でしたが、ヤガミヒメのように彼のことを諦めなければならない運命なのかと思えます。

彼からラインをブロックされ電話ももうしないでほしいと言われ、放心状態で涙も出ませんでしたが、次の日の九月二十八日思いもよらぬことがありました。その日の夜、月を見ると月がぼやけていました。今年の十五夜は十月一日なので、十五夜まであと三日だなと考えていました。去年の十五夜の夜にはとてもすごいことが起こりました。その時好きだった人のことを思いながら月に向かってあんたは私のものだよと心の中で言ったんです。そしたら、その時妹が撮った写真に月を掴もうとする大きな手と龍が映っていたんです。そのことを思い出し、その日夜空の月を見たあと家の中に入り携帯を見ていたら異変に気づきました。半年前まで一年八ヶ月もの間想い続けたその男性のラインのホーム画面が真っ黒になっていたんです。つい最近までは半年ほど前に産まれた子供の写真をホーム画面に載せていたのに、それが消え真っ黒になっていたんです。その男性に対してはもう何の感情も持っていないんですが、真っ黒のラインのホーム画面を見たらとても心配な気持ちになり、彼にラインを送ってみました。ですがいつまで待っても既読がつきませんでした。彼は私のラインをブロックしているのかもしれません。

連絡は取れなかったものの心配な気持ちになってすぐに行動ができたのはこの半年間夢中になったオオクニヌシ系統の彼のおかげです。彼は本当に真っ直ぐな人でした。精神病の父親との闘いの日々があまりにも長かったため私はかなり気が荒くなり、好きな人にも素直になることができない人間になってしまっていたのに彼の真っ直ぐな言葉と行動に魅了され私は今までとは全く違う自分になっていったんです。彼のおかげで意地を張らずに素直な自分の感情を出せるようになれたんです。彼は私に恋愛の仕方を教えてくれた人です。半年間とても苦しみましたが感謝もしています。以前好きだった男性を心配してラインを送るという行動を起こしたことによってオオクニヌシ系のその彼への執着心が少しとれた気もします。心の傷が完全に癒えるまでまだ時間はかかると思いますが、彼の幸せを願える人間になれたらと思います。