286「彼の誕生日」 令和3年6月

六月十二日になりました。彼と再び連絡を取り合うようになって二週間経ちました。今日は彼の誕生日でした。何日も前から彼の誕生日を一緒に過ごしたい、一緒に祝いたいという気持ちはあったんですが、彼が犯罪者かもしれないという疑いの気持ちがあるなかで誕生日祝いなんてそんな呑気なことをやってていいのかという気持ちがありました。いろいろ考え込んでいるうちに彼は誕生日の日に友達が何人か彼の家に集まって飲みをすることが決まってしまいました。泥沼で去年だって彼の誕生日を一緒に過ごせなかったのに今年もまた同じことになると考えたら悲しくなり、誕生日に予定があるならその前日にお祝いしたいからと昨日彼を夕食に招待しました。

夕食の準備をしながらラインのやりとりをしてもう着いてもおかしくない時間になっても一向に彼が来ないのでおかしいな、また何かあったのかなと思いました。というのも四ヶ月前の息子の十歳の誕生日祝いに彼を招待した時も彼がうちに来る直前に彼が婚約を破棄した女性が精神病院の外泊許可が出て家に戻ってきているという連絡を受けて彼や彼の親がばたばたする状態になってしまったからです。その一ヶ月前にその女性が外泊許可が出て精神病院を出てきた時にその女性が彼の職場に何度も電話をかけてきておかしなことを言って大騒動になり、夜もその女性が彼の家に来て警察を呼ぶという事態になっていたため、その日二度目の外泊のことが分かって彼ももう息子の誕生日祝いどころではない状況でした。ですが、それでも彼はその日息子の誕生日祝いに来てくれました。

楽しく過ごしたかったのにその時嫌な思いもしました。彼がうちに着いてしばらく経った時にその女性のことで彼の親から電話がかかってきて、彼が「親から電話が来たから静かにしていて」と言うようなことを言って奥の部屋で親と電話で話していたようなんですが、私は台所で料理を作っていたので彼の声が全く聞こえず、息子が大きな声を出してしまっていたため息子の声が電話で彼の親に聞こえてしまったようなんです。それでその時に親から「女遊びをしてるのか」「また子持ちか」というようなことを言われたそうです。それで、電話をいったん切り彼は「親から電話がきたから静かにしててって言ったのに」と機嫌を悪くして、親に電話をかけ直すために彼は外へ出て行きました。その女性の問題でなぜ彼のお父さんが深く関わっているのかというと、彼は彼のお父さんと会社が同じだからです。部署や働く場所は違いますが彼のお父さんも同じ会社で働いているため、その一ヶ月前にその女性が彼の職場に何度も電話をかけてくるという事件が起きた時に彼のお父さんにも大迷惑をかけてしまっていたからです。彼はその事件があって職場の人達から白い目で見られ、責任をとって辞めろというようなことを何度も言われていたようなんですが、彼のお父さんは「辞めるなよ」と彼を励ましてくれていたそうです。

そういう複雑な状況だったので、その女性が二度目の外泊許可が出て精神病院を出てきたのと息子の誕生日が重なりとてもタイミングが悪かったんです。私は状況を何も分かっていない息子のことを「なんで大きな声を出したの」と叱ってしまい、息子もしょんぼりなってしまいました。いつまで経っても彼が外から帰ってこないのでたくさん用意した息子の誕生日祝いの料理を息子と二人で食べだしました。感情を取り乱してはいけないと思いながら、気まずそうにしている息子に罪悪感を感じながら食べました。二十分ぐらいしてから彼は電話を終え家に入ってきました。当たり散らしたことを気まずく思っていたのか彼は気まずいながらも明るく振る舞ってくれました。食事中しばらくは三人とも気まずい感じでしたが、彼ががんばって明るく振舞ってくれたおかげで息子もまた自然な感じに戻っていたので安心しました。

四ヶ月前にそういう出来事があったため、彼は「俺も機嫌が悪くなっていろいろ言ってしまうこともあるから」と子育てへの不安が強くなってしまったんです。そういうこともあって彼は子持ちの私とは付き合えない、結婚できないと彼は意思を強めてしまったんです。

婚約を破棄した女性が精神病院に入院してずっと彼への執着を持ち続けているという状況の中で彼が私と毎日のようにラインのやりとりをしてしょっちゅう会っているということは彼にとっては誰にも言えない秘密のことだったんだろうと思います。ですが、私にとっては洗脳されて奪われた彼がようやく私の元に帰ってきたという感覚なので、世間の目を気にすれば多少は気まずいですが、悪いことをしているつもりはありませんでした。

話がだいぶ飛びましたが、四ヶ月前の息子の誕生日祝いでとても嫌なことが起こっているため、今回の彼の誕生日祝いでも彼がなかなかうちに来なかったので、またその女性のことで何か問題が起こったんじゃないかと不安になりました。やっと彼から連絡が来たかと思ったらやはり問題が起こっていました。今回は彼が婚約を破棄したメンヘラ女性ではなく、問題が起きたのは彼の妹でした。彼の妹もメンヘラでいろいろ問題が起こっていて家族が大変なことになっているとは前から聞いていました。その日は彼の妹のことでまた問題が起きて親から連絡が来たため彼がうちに来るのが遅くなったようです。彼の妹を浄霊で救ってあげたいです。ですが、今は彼が本当に人食い殺人犯なのかどうかが分からない状況です。彼の妹を助けたいという気持ちはありますが、簡単にはできそうにありません。いつか助けてあげたいです。

四ヶ月前の息子の誕生日祝いの時には嫌な思いをしましたが、今回の彼の誕生日祝いは楽しく過ごせました。彼はまだ調停中なので今はまだ堂々と付き合うということもできない状況ですが、四月と五月の二ヶ月間離れている間に彼は私への気持ちを再認識してくれたようなので、彼が人食い殺人犯でないという確証を得て調停も無事に済めば私はいずれ彼と結婚するかもしれません。

ですが、やはり幻覚と思い込みなどではなく彼が人を殺し人の肉を食べたのは本当の話なんじゃないかと思う気持ちが六割ぐらいあります。彼は一切その話はしてこないので、このままその話はなかったことにして私を丸め込むつもりでいるのかもしれません。いつかはそのことがはっきりすると信じています。